第29回「海とさかな」自由研究・作品コンクールのテーマ『海とさかなとわたしたち』というテーマに『魚食そのものに目を向ける』という視点を加え、より身近にある魚との接点を重視した取り組みに期待しています。新たな参加者のヒントになるように、創作部門における過去の受賞作品から、魚食(食育)に関連する視点に優れた作品を紹介します。また、受賞者に、参加当時をふりかえってのコメントを頂きました。
お魚探検隊
お魚探検隊 ◇第27回(2008年)朝日新聞社賞受賞作品 創作部門作文「とどのつまり」
受賞者:後藤のはらさん 受賞時 小学6年生(2010年現在 中学2年生)
※第25回(2006年)日本水産株式会社賞 創作部門作文「アイナメ」にて受賞歴有り。
お魚探検隊
<記者>
→コンクールに参加時、取り組んだテーマに至るまでのきっかなどを教えて下さい。

<後藤>
→我が家は、【食べ物が命を延ばす・性格を作る】という考えのもと、六人全員が買い物もするし調理もします。だから、まずい食料を買った時の探求がすごい。原因を探り、対応をチェックします。
あの時の「ぼら」は、私も覚えていますが、調査に協力してくれる人に恵まれた、貴重なネタでした。
食べ物(命)に対して、感謝と好奇心がいっぱいの家族がいたからこそ、書けた作品でした。

<記者>
→今後コンクールに参加する後輩へ、テーマ選び方のアドバイスや、何かに取り組む時に、日頃から心がけていることを教えて下さい。

<後藤>
→マイナスのネタこそ、プラスにできる!
まずい・痛い・高い・恥ずかしい・めんどう・地味.....家族の食卓で出てきた『グチ』は、調べがいがあります。なんで、そうなのか、不満や不安の原因を探しやすいからです。日ごろから、買い物の手伝いをしていると、疑問ができた時、「あの人に聞けばいいかな」と思い浮かぶ、親切な人と知り合えます。お店屋さんは、あちこち顔をだしておくといいと思います。
特に、魚屋さんは、肉・野菜・菓子を売る人より、おまけしてくれたり、話好きな人が多いように思います。

<記者>
→今現在、興味を持っていることなどを教えて下さい。

<後藤>
→「海とさかな」自由研究・作品コンクールに応募したことで、自然と魚食が多くなりました。
そして、種類や調理法がバラエティに富んだ魚が好きになりました。
魚を育てたいと思うようになりました。海を守りたいと思うようになりました。
ネタ探しから始まった魚とのつきあいが、興味の幅や、視野を広げて、グローバル化している自分に気付きました。
 
◇第27回(2008年)朝日新聞社賞受賞作品 創作部門作文「とどのつまり」
創作部門作文「とどのつまり」のご紹介
「うっ、くせぇ」
夕食の刺身を食べた家族六人、一斉に同じことを言った。祖父と父は「捨てれ捨てれ、こっだ消毒臭いの。」「バター焼きか、から揚げにせばいいべか。」と祖母。買った責任を感じているらしい。母はというと(うわっ、もう電話かけてる!)
「もしもし、さっきボラの刺身を買って来た者ですけど、ドロ臭くて食べられない。何か添加物とかスプレーしたんじゃない?」
ふだんはトドのように寝転がっている母だけど、こういう時だけは動きが早い。特にテレビで食品業界のウラ…と、防腐剤をスプレーしている所を見たばかりだ。
「ボラは河口に住んでるから、ヘドロ臭いのがあるけど、食べても心配ないって。」 けれど、ヘドロと聞いて、母以外は誰もボラを食べず、その晩はふりかけごはんで終わった。祖母は「もう、あの店からは魚コ買えねな」と、怒りまくっていた。
私は海のない奥羽山脈のふもとの村に住んでいる。魚のことはあまり詳しくないから、雑小魚煮(フナのような小雑魚)売りのおじいさんに聞いてみた。
我が家は湯治宿なので、ちょくちょく来てくれるのだ。
「ドロ臭くない魚の見分け方教えて下さい。」
「種類だ。川だったら鯉、ドジョウ。海だったらボラ。夏は特に臭い。冬になれば食わねぐなっから、きれいな水に入れてドロ吐かせて、それから調理するなだ。」
ヘェーッ、ドロ臭くて有名な魚がいるなんて知らなかった。じゃ、海のそばに住んでる人なら皆知っているのかな。福島県のいとこに聞いてみた。港の近くに住んでいて、買い物や料理を手伝っているから詳しいかも。
「ボラ?あのピョンピョン飛び跳ねているトビウオみたいなやつ?ここら辺ではつったら捨てる。ウグイに似て身が少ないし、まずいの知っているから。ボラの刺身なんて何かのまちがいだよ。うち、1回も売っているの見たことないもん。」
まずいとわかっている魚を売っているわけがないと決めつけられた私と妹は、ボラ調査に乗り出した。
職業別電話帳で秋田と福島の鮮魚店をピックアップし、「ボラの刺身、売っていますか?」と聞きまくった。「冬だけ売ることがある。」と答えた秋田の二店を除き、やはり福島県浜通り地方では売っていなかった。
東日本の海がない地方だけ、ドロ臭くてもボラを食べるのだろうか?西日本や日本海側ではどうだろう...
ネット通販で魚をお取り寄せしているので、買ったことがある店にも聞いてみた。越前の魚屋さんが親切に教えてくれた。
「ボラは越前でも捕れますが、他の地魚が多くとれるため、釣っても誰も食べません。かまぼこにされるか、養殖場のエサ...」
私は何だか悲しくなった。山に住んでいる秋田県人は、ヘドロ臭いエサを食べているの?「ボラがヘドロ臭いのは水質汚染によるもので、汚染が進む前は『食用魚』として人気だったようです。日本三大珍味として有名な『からすみ』はボラの卵巣で作られていました。長崎の名産、高級品です。」
えっ? 秋田県人は高級品だとわかっていて、ヘドロ臭くても食べていたの?
ハマチはブリに。ボラはトドに呼び名が変わる出世魚だった。人間の勝手で三大珍味の高級品扱いしたり、ヘドロ臭いゴミ魚扱いしたり、かわいそうなのはボラの方だった。
トドのつまり、おいしいボラを食べるためには人間が反省して、環境汚染を悔い改めなければいけないのだった。二百九十八円、安くて飛びついたヘドロ臭いボラから、とんでもなく大切なことを教わってしまった。

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