2021年に「海とさかな」自由研究・作品コンクールは、第40回の実施を数える事となりました。

これより、遡ること40年前に、この作品コンクールが誕生する誘因となった、小さなエピソードがあります。

そのはじまりは、ひとりの少女から、日本水産株式会社(以下、ニッスイ)に送られてきた一通の手紙の存在でした。

当時、ニッスイには「お客様相談室」(現:お客様サービスセンター)があり、日頃から自社製品について、消費者からの質問等に答えていました。

そこへ夏休みの前に、福島県のある小学校分校に通っている五年生の少女から手紙が届きます。

「わたしの学校は山の中にあります。これから『かんづめの勉強』をすることになりました。

けれども、山の中で調べるにも、何もなく調べられませんので、手紙を書きました…..」

そんな書き出しの手紙には、かんづめの種類、その中の魚はどこの海で、どんな船がとるのか、など、質問項目が要領よくまとめられていました。

直ぐに、ニッスイの社員が、関連する資料を集めて送ると、夏休みが終わったころ、この少女からお礼状が来ます。

「わたしはビーズでとんぼとか、ちょうを作るのがとくいです。わたしの作った、かもめのおやこと、さかなを入れておきます。ちょっとしっぱいしたけれど、もらって下さい」

お礼状の中には、ビーズ細工が入っていました。小さなビーズを糸でつないだ、一センチから二センチ足らずの、かわいい魚とかもめ…..

水産を扱う会社へのお礼にふさわしい海の生き物たちです。その少女の心くばりに感激しました。

さっそく小学校のカリキュラムを調べてみると、小学五年生の社会科には、水産業の授業が年間十二時間ある(当時)ことがわかりました。

二年生、三年生でも「さかなやさん」「かんづめ」などの時間があるが、そのわりには、海や魚に関する教材が少ないと感じました。「水産会社はこれまでなにをしていたんだ。日本は海に取り囲まれた国で、魚は大昔から、もっと身近な存在だったはずだ」…。

そうした反省もこめて、ニッスイは「海を拓く」「海と魚と私たち」など、関連する資料を作成し、全国の小学校に送る事にしました。

このような作業や議論の中から、「海と魚」をテーマとした、作文コンクールのアイディアが生まれる事になります。自分の手で綴ることで、小学生たちは海と魚にいっそう親しみを抱くであろうという願いもありました。

呼びかけに応じて、全国から作品が集まってくると、ニッスイの社員たちは目を洗われました。美しく、純真な、あの少女が送ってくれたビーズに似て、珠玉のような作文が集まったのです。自分が釣ったクロダイ三十尾の体長、体重を調べてレポートにまとめた瀬戸内の六年生。イシモチの石を宝物のように大切にしている四年生の、詩情あふれる文章。魚のことはなんでも知っていて、魚博士と学校であだ名されている五年生が、漁に出ていく父を気づかう一文…..。

海と魚についての新しい発見を小学生たちから教えられるような気持ちにとらわれました。

このように、子どもたちの発見や発想の可能性に触発され、「海とさかな」自由研究・作品コンクールは、研究部門(自由研究、観察図)と、創作部門(作文、絵画、絵本、工作等)の幅広い表現手法にて、取り組みが可能なコンクールに発展して行くことになり、現在に至っています。