2026年7月20日掲載(朝日小学生新聞)

魚なのに陸上で育つ!? デンマークの事例から学ぶサーモン養殖の最前線!
海や魚の世界から、作品づくりのヒントを見つけよう。

不思議がいっぱいの海と魚の世界は、自由研究のテーマの宝庫。今年も作品づくりのヒントとして、3名の講師によるオンライン出張授業を開催しました。全国から合計76校(2,638名)が参加した出張授業の様子を2回にわけて紹介します。後半は、株式会社ニッスイ中央研究所大分海洋研究センターの遠藤琢さんが、環境に配慮した未来のサーモン養殖について教えてくれました!

授業3「デンマークの事例から学ぶ! 自然環境を大事にする未来の養殖」
講師 株式会社ニッスイ 中央研究所 大分海洋研究センター
遠藤 琢

<「陸上」でサーモンを養殖する工夫とは?>

お寿司の人気ネタとして知られるサーモン。じつは、みなさんが食べているサーモンのほとんどは養殖された魚です。授業では、デンマークで5年間、サーモン養殖の仕事をしてきた株式会社ニッスイの遠藤琢さんが、そのひみつを教えてくれました。


 サーモンの養殖量では、北欧のノルウェーが世界一。サーモンが好む冷たい海に囲まれたノルウェーでは、海にイケスを浮かべて養殖が行われています。ところが、遠藤さんが働いていたデンマークには、サーモンの養殖に適した冷たい海がほとんどありません。どのようにサーモンを育てていたのでしょうか。その答えが「陸上養殖」です。


 「魚なのに陸上?」と、不思議に思うかもしれません。遠藤さんは「陸地に大きな養殖場を建て、水槽やポンプなどの機械を使って、冷たい海の環境を人工的に作り出しているのです」と、紹介しました。魚を飼育して汚れた水は機械でろ過し、再び水槽に戻すといいます。この仕組みを「循環」といい、少ない水でもサーモンを育てることができるそうです。

<サーモンのフンも資源に変える!>

 

養殖場には、魚のフンや食べ残しを取り除く機械や、水に酸素を送り込む機械などがたくさん並んでいます。さらに、ほとんどの設備はコンピューターで管理されていて、24時間365日、異常がないか監視されています。水中の酸素が不足したり、ポンプが止まったりすると、すぐに知らせてくれるそうです。



 それでも、機械だけで養殖できるわけではありません。「魚が元気か」「きちんと餌を食べているか」などは、人の目で確認する必要があります。また、魚にとって有害なアンモニアが増えていないかを調べることも大切な仕事だといいます。

 この陸上養殖には、じつはさまざまなメリットがあります。たとえば、室内なので暑さや寒さの影響を受けにくく、魚が快適に過ごせたり、病気の原因となる細菌が入りにくかったりする利点があります。さらに、使った水をきれいにしてから自然に返せるため、海を汚しにくいという良さもあります。

 さらに、サーモンのフンも無駄にはしません。集めたフンは別の施設へ運ばれ、ガスを作る原料になります。そのガスから電気や熱を生み出し、資源として活用しているのです。

<ふだん食べている魚が面白い研究テーマに!>

このように陸上養殖では、環境への負担を減らすためのさまざまな工夫が見られます。遠藤さんは、「食べ物は自然の力を借りて作られており、サーモンも海の水を借りて育てています。だからこそ、使った後はきれいにして自然に返すことが大切なのです」と話しました。


答え④

 また、デンマークでの経験について、「英語を使って仕事をしていました。言葉や文化、考え方が違う人たちと働くことは、とても刺激的で楽しい経験でした」と振り返り、「みなさんも、広い世界に目を向けてみてください」と、小学生にエールを送りました。

 授業を通して、身近な魚であるサーモンも、私たちの食卓に届くまでにさまざまな工夫があることがわかりました。ふだん何気なく食べている魚について調べてみると、新たな発見があるかもしれません。


<参加した小学校の感想>

(1)宮城県 仙台白百合学園小学校

通常の学習内容ではなかなか紹介できないような事例をうかがうことができました。

(2)神奈川県 三浦市立旭小学校

  SDGsについて学習している学年であったため、地球環境についても考えるきっかけになる内容でした。

(3)和歌山県 和歌山市立野崎小学校

 難しいお話もありましたが、子どもたちは集中してお話を聞いていました。クイズも楽しそうでした。特に良かったことは、最後の質問コーナーで何度も的確に子どもたちの疑問にお答えいただけたことです。

(4)佐賀県 玄海みらい学園

 4年生が授業参加しました。社会科で今後養殖や栽培漁業を学習するので、大変役に立ちました。「授業が楽しかった。先生の話に興味をもった。」という児童の声がありました。