2022年7月31日 朝日小学生新聞掲載

不思議がいっぱい!
海や魚の世界は、自由研究のテーマの宝庫

「海」や「さかな」をテーマに作品を募集している「海とさかな」自由研究・作品コンクールでは、子どもたちに海やさかなの不思議を学んでもらうため、2名の講師によるオンライン出張授業を開催しました。全国から合計26校(1,295名)が参加した出張授業の様子を2回に分けて紹介します。

授業1「深海魚の光の秘密」 
講師 サイエンスエンターテイナー・ジャパンGEMSセンター特任研究員
五十嵐 美樹

「身近な製品にも見られる、深海魚が光るしくみ」

講師の五十嵐さん

海の生き物が光るしくみ

 海の中には多くのめずらしい生き物が暮らしています。深海や夜の海で幻想的な光を放つ魚もその1つ。「サイエンスエンターテイナー」として活動するジャパンGEMSセンター特任研究員の五十嵐美樹さんは、「光る性質を持つ魚は、深海魚に多く見られます。その目的は『敵を驚かせる』『エサをおびき寄せる』『仲間とコミュニケーションをする』などが考えられていますが、実はまだわかっていないことも多いのです」と説明します。

 海の生き物が光るしくみは、いくつかに分けられるそうです。その一つは、ある波長の光を吸収して、受けた光とは別の波長の光を放つ性質で、これを「蛍光」といいます。蛍光で光る深海魚には、2020年に日本で新種が発見された「アカタマガシラ」などがいます。

水深200メートル付近に生息するアカタマガシラ。紫外線を浴びると、えらぶたの内側が緑色に発光します

 「私たちの身近にも蛍光で光る物質があります。自分で実験してみると、その仕組みがよくわかるでしょう」と五十嵐さん。試しに、目に見える光よりも波長の短い光(紫外線)を中心として発しているライトを当ててみました。授業では、蛍光漂白剤入りの洗剤やビタミンB2が含まれた栄養ドリンクが、それぞれ青色や黄緑色に発光する様子を実演しました。ほかに、どのようなものが蛍光で光るかを調べると面白い研究のテーマになりそうです。

ブラックライトを当てると、栄養ドリンク(右)はあざやかに光り、コーラ(左)は変化しませんでした

<化学発光や蓄光とは?>

 蛍光は、光が当たっている時は発光しますが、光が当たらない環境では発光しません。一方で、体内にある複数の物質を混ぜ合わせて、化学反応を起こすことで光る生き物もいるといいます。これは「化学発光」と呼ばれ、夜間に波打ち際で青白く光る「ウミホタル」などが有名です。

 身の回りにある製品では、コンサートで応援する時などに使う「サイリウム」という棒状のグッズは、化学発光によって光ります。折り曲げることで、異なる液体を混ぜ合わせて化学反応を引き起こします。

 ほかにも発光のしくみには、光をたくわえて発光する「蓄光」などがあります。発光する海の生き物はたくさんいますから、それぞれどのような仕組みで光るかを調べてみてもいいでしょう。

光を蓄えて光続ける「蓄光」の実験

<自由研究のアドバイス>

 最後に、五十嵐さんは自由研究の進め方について、「はじめに自分の疑問に対して『こういうことかもしれない』と、仮説を立てて調べてみると良い研究になるでしょう。想像力を働かせることも大切です。例えば、『こんな生き物がこんな風に光ったら面白い』と想像すると、そこから意外な発想が生まれるかもしれません。海の不思議を出発点として、ぜひ自由に考えて研究や創作を楽しんでください」とアドバイスしました。

「深海魚は食べられる?」「どれくらい種類がいる?」など授業の終わりにはたくさんの質問が出ました